デッサン・ド・ムジィーク / ベイカー氏はオリーブ匂い香

Dessin de musique|Mr.Baker's the olive aroma.

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恐縮ながらトキを数十年遡る事になる。深夜AM放送聴取しつつ日夜制作課題へ取り組む美術学生時代、少なからず憧憬する女性D.J が、魅了されたジャズ・ミュージシャンの薀蓄などコメントしており、其のインド系ハーフ美人嬢より間接的暗示含む音源摂取した故だろうか、聴き手を媚薬の様な夢想ムードへ誘引し、虜にしてしまうソフト・ヴォイス主を、私は同性でありながら迂闊にも肯定してしまった!?

生来声質が甘美で中性的且つ妙に艶っぽい上、閨房術如きセクシィで繊細な演出をするウィスパリング・テクニック(息漏れ声:Breathy voice)駆使する為、巷女性達から多大な評価受けるヴォーカリスト、本業!?トランペット奏者のチェット・ベイカー氏と遭遇した経緯は、ジャズに対して或る意味ストイックではない、オリーブの匂い香?芳しく入り混じる青春期動機が介在する。

先達より『・・・・ナガラ族 』などと云う名誉称!拝命する程、ラジオ放送聴きつつ机向が学生達のトレンドだった時代、諸番組中「 注/1ザ・パンチパンチパンチ 」なる深夜放送もあり、初代D.J にはオーディション選出の「 モコ・ビーバー・オリーブ 」嬢達がパーソナリティ務め、当時大学生や受験期迎える団塊世代から少なからず支持され、テレビ番組出演やレコード発売するなどアイドル的存在になっていた。

中でも私は、冒頭ハーフ美人のオリーブ嬢(シリア・ポール|Celia Paul)へ思いの波長を寄せており、愚生製図板前には彼女中心のアイドル・フォトコラージュ・パネル掲載させつつ、課題制作の疲労感で顔を上げれば、眼福効果(目の保養)と共にカジュアルなヒィーリング在ったのではないか?と記憶する。

しかしながら、その時はベイカー氏音源購入までに至らず聴取のみでフェイドアウト、時機到来には今暫らくの仕込期間?と人的触媒!が必要だったようだ。

学卒後、商空間デザイン業界の大手へ入社、配属された設計課上司が幸いにも音楽への造詣深く、当方ジャズ嗜好を聞き及んだのか、或る時『 此れ聴いてみる? 』と差出された`C.Baker SINGS`を観た際、忘却彼方から淡いオリーブの芳香と共にベイカー氏記憶が甦り、再邂逅できた次第。
その晩、早速借用LPをターンテーブル!へ乗せ試聴するのと同時に、SONY:オープンリール(7号)テープデッキ!で収録済ませたのだが、聴覚満たされたとは云え所有欲の疼きを抑えられず、下記二枚の氏アルバム初購入する事になった。

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      C.Baker SINGS'56          C.Baker in NEWYORK'58

チェット・ベイカー氏の風評や逸話は数多く存在するものの、残念な事に或る意味不名誉な内容も少なからず聞こえてくる。其の素因となるのは、求音への限界感じる為なのだろうか?現実から目を背け理性的判断から乖離した状況へ追い込まれた結果、不健全な創造性による自壊した姿(酒色や薬物中毒)を、人前へ晒しつつ活動せざるを得ない立場だったからかも知れない。

ところで、若く才能に恵まれたプロフェッショナル職業人への、邪悪な仕掛けが俗世には在るように思う。天賦の資質が若齢期に開花し、世間から脚光浴びると同時に耳目集め名声を得られる反面、若いが故に彼等の陥りがちなトラップ、公的秩序に背く行為の方程式如きパターンがある。
業界やファンからの期待を一身に背負い、それら要望へストイックに応答しようとするあまり、自意識過剰で精神的に追い詰められ、強いストレスから自我守る為クリエイティヴ現実から逃避する術が習性となり、酒色や賭博へ深入りした挙句の暴力沙汰、辿り着く果てはパンドラの箱(薬物)と云う禁忌に手を染め、その常習化から精神及び人格が破綻し、前途有望な若者を暗黒の道程へと導く。

若き俊英全てに該当する訳ではないものの、氏においては其れらしき兆候垣間見られる為、ヤジ馬根性で風聞をネット検索すれば、皆目周知と思うが注2/管楽器奏者にとって大切な前歯欠損したまま公演する痛ましい姿残されており、吹奏時ブレス・コントロール難儀したのではなかろうか?甘美な息洩れ声にも少なからず影響及ぼしたかも知れない?等、杞憂ながら要らぬ勘ぐりしたくなる映像も存在する。

巷間諸説飛び交うネチズン好みネタなんだが、其の因果については薬物授受の際トラブルから乱闘騒ぎに至り・・・、また常習者は口渇するので口腔衛生悪化の末に・・・、或いは異常な甘味嗜好する・・・等々から、歯はボロボロになってしまうらしい。

とは云え、ヴォーカリスト&トランペッターと云う二兎追う者ゆえ苦悩倍加する一方で、希代の楽器を謳わせる!?才能持併わせており、その能力に対し躊躇する必要へ迫られないアーチストでもあるのだ。    
晩年の音源聴取する際、ジャンキーな印象を察知する事無きにしも在らずだが、それでも特殊効果思わせる歌唱や吹奏はミステリアスな響きと余韻を含み、枯淡の境地とでも云ったら良いのだろうか?厳選された符音狭間には芸域や空寂が在り、俗臭覗かせない渋み在る涼やかなサウンドからは、確定的事実として紛れもない正統派ジャズを感じずにはいられない。

また、歌唱法につき時代考察加えれば、1960年代初頭世界的潮流起こしたボサノバのアントニオ・C・ジョビン及びアストラッド&ジョアン・ジルベルト等のブラジル・ミュージシャン達へ、氏ヴォーカル・スタイルが多大な影響与えたのではないだろうか?また、此の種の発声法は、ボサノバ風味漂うマイケル・フランクスやシャデー等へも少なからず参考となったようにも思う。

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           Study-1                    Study-2

素描創出時、上記Study-1/2のイメージ・ラフスケッチを描き起こしつつ、若年期においては妖精とも評された氏の観念的妄想を巡らしながら、幻想的フィクション・ワールドへ踏み込み夢遊してみる。
下記は其の下絵プロセスで、`当方青年期想い出`と`二兎を追う者~`及び`妖精`と云うモチーフから、ルイス・キャロル氏作品に知的刺激受け恵与された未完成作画なんだが、非現実的思考である旨ご容赦頂きながら描いた内容記述すれば・・・・・、

不思議の国の二兎を追う幻覚でも垣間見、月下に浮かぶ窓枠がウサギ穴にでも見えたのかも知れない。1988年西ドイツ公演後オランダのホテルへ宿泊、そして5月13日金曜日の午前3時頃、運命の糸に導かれつつ謎の白ウサギから幻惑され、不思議の国の小さな兎穴へ追尾して行ったのではないだろうか?

愚拙な想像力働かせ『 痛みと憐れさと儚さ 』伴う架空の脚色をしてみたのだが、どん底から再起目指していたとは云いつつも、折悪しく終の棲家(当日宿泊居室)にはヘロインが残されていたと云う。

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          `Mr.Baker's the olive aroma` / Unfinished.

                     

本名:チェズニィ・ヘンリー・ベイカー・ジュニア氏|Chesney Henry Baker Jr.
1929年合衆国オクラホマ州イェール出身ジャズ・ミュージシャン。ウエストコースト代表するトランペット奏者、且つ艶っぽい歌声評価されるヴォーカリストでもあり、デビューアルバム『チェット・ベイカー・シングス』は著名、ジャケットは氏撮り続けた写真家ウィリアム・クラクストン|William Claxton。死没:1988年5月13日深夜、オランダ・アムステルダムのホテル2階窓から転落し謎の死を遂げた、享年58。


※ 此のトピックは、昨年11月日本に於いてロードショー公開された、イーサン・ホーク主演映画『 BORN TO BE BLUE / ブルーに生まれついて 』を視聴する以前に、著述したものである旨、ご了承頂きたい。

注/1 AMラジオ・ニッポン放送の深夜15分間番組(1968年6月~`82年12月)、スポンサーは平凡出版(現マガジンハウス)の若者向け週刊誌「平凡パンチ」、テーマ音楽を三保敬太郎氏、初代パーソナリティが、シリア・ポール:オリーブ、高橋基子:モコ、川口まさみ:ビーバー、各美人嬢達であった。又、当時FM放送はNHKと東海大学実験放送のFM東海(後FM東京)2局だけで、FM深夜番組など無い時代。

注/2 1959年イタリア・トリノにおいて、コンサートホールにもかかわらずサングラスのまま歌唱する(目周り青アザ故か?)`My Funny Valentine`
1964年ベルギー・ブリュッセルにおいて、`Time After Time`歌唱時も前歯欠損、トリノから5年経過もそのままなんだが、当時治歯技術なかったのだろうか?

17:39 : デッサン・ド・ムジィーク:  トラックバック(-)  コメント(0)